2023.8.10
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ひろしま探究学習ラーニングコミュニティ勉強会vol.1「安田女子中学高等学校 女の子トイレプロジェクト学ぶ!〜私たちの探究の進め方〜」を開催しました。

初めに

今年も「ひろしま探究学習ラーニングコミュニティ」をスタートしました。今年度、第1回目の勉強会のゲストには、安田女子中学高等学校 STEAMコースの田口先生と3年生の瀬戸さんのお二人にお越しいただきました。安田女子中学高等学校のSTEAMコースでは、一体、どのように探究学習に取り組んでいるでしょうか?

女の子のトイレプロジェクト 瀬戸さんのお話

瀬戸さんが取り組んだテーマは、女の子が生理で困った時に、誰でもいつでも、生理用品にアクセスできる環境づくりです。

ある日、瀬戸さんは、SNSで、東京都の公立高校では、誰でも生理用品にアクセスできる状況が整っている事例があると知りました。安田女子高校でも実践できないかと考え、保健室での現状の生理用品の貸出状況(1日2〜3件)や、東京都の事例との比較を行い、ニーズがあるのではないかという仮説を立てます。実際に、プロトタイプとしての「女の子のトイレ」を設置すると、1日あたり約10件の利用がありました。そこから、持続的に、学校全体で、「女の子のトイレプロジェクト」を実施することを目標に、プロジェクトを進めます。

プロトタイプの時に実施した利用者アンケートでは、「生理用品が外から見えないようにしてほしい」という声がありました。友人で、デザインをテーマとして探究を進めていた生徒とコラボレーションし、ボックスのデザインを改善しました。

活動を進めた現在は、学校のトイレ12箇所で、「女の子のトイレ」が設置されています。持続性の担保のために、貸出であるという形式にして、ルールの周知に取り組みました。また、後輩も巻き込んでチームづくりをしています。瀬戸さんのこれからの目標は、この取り組みを、広島県全体の高校へ、広げていくことです。

「このプロジェクトや、活動をまとめて、一番強く思ったことは「私から始まる」ということです。私が思い立って、始めたことに、先生や地域の方々が協力してくださって、私の周りの世界が、行動したことで変わり、また喜んでくれた方がいるということは人生の中で大事な経験となりました。」

女の子トイレプロジェクトのきっかけ

どのように伴走をされたか 田口先生のお話 

瀬戸さんのお話の後には、田口先生から、どのように学習を支えられていたのか、お話を聞きます。

安田女子高校のSTEAMコースは、2021年度に新設されたコースで、各学年1クラスで、25名の生徒が在籍しています。大切にしているマインドセットとして、「型にとらわれないこと」「まずやってみること」「失敗を糧にすること」があります。

プロジェクトベースドラーニングの授業が、週に4コマあり、プロジェクトを進めながら学んでいくそうです。PBLのためのマインドセットの学習や、小さなサイクルのプロジェクトを行う学習ののちに、学年合同でプロジェクトに挑む期間が用意されています。これらのカリキュラムの中では、心理的安全性を持てるように、チェックインを大切にしたり、最初は真似でいいよと声かけをしたりしているそうです。また、カリキュラムのベースとなる考え方として、デザイン思考が取り入れられています。

質疑応答(一部を抜粋してご紹介)

質疑応答では、以下のようなやりとりがありました。

Q、(瀬戸さんへの質問)テーマはどんなふうに見つけていますか?

A、(瀬戸さん)私はネットサーフィンや、身近なものに課題がないかなと、探しています。

Q、そういう探し方は、いつ身につけましたか?

A、(瀬戸さん)小学生の頃の自由研究がすごく好きで。普通、夏休みだけだと思うのですけど、私はそれ以外の時にも、自由研究して先生に見てもらっていました。その時から、自分の興味あることと、社会で必要とされていることのリンクする部分を見つけることを、身につけたのかなと思います。

Q、(瀬戸さんへの質問)誰から影響を受けたと思いますか?

A、(瀬戸さん)本を読むのが好きで、伝記や図鑑を読んでいて、研究者みたいなものへ憧れがあったのかなと思います。

Q、(瀬戸さんへの質問)安田女子に入って、新しく学んだことはなんですか?

A、(瀬戸さん)安田女子に入る前は一人でやることが多かったのですけど、安田女子で分かったことは、自分の得意不得意を分かった上で、人の得意不得意を知って、自分の苦手なことをできる人と一緒にやったりとか、人と一緒にやるということを学びました。

Q、(田口先生への質問)どんなふうに瀬戸さんのプロジェクトに伴走されていましたか?

A、(田口先生)瀬戸さんは、自分で進めていける人なので、後押しするというよりかは、ブレーキを踏む部分をしていました。笑 STEAMコースとしては、人と一緒にやろうと話をしています。社会に出たら、人と一緒にやらないといけないことが多いです。また多様性も大事にしていて、自分と違う人と組みなさい、友達同士だけじゃない方がいいよと伝えています。そうでないと視野が狭まってしまいますよね。テーマ設定に関して言うと、考えすぎずに、とにかく1サイクルやってみることを後押ししています。人と同じでもいいので、やってみて、どんなことが難しいか、知ること。次の回転をすると、全然違うものに変わっていく。次の回転にいく時に、「何を学んだの?」「どんなことに気づいたの?」と話しかけて、その子の個性が見えてきて、次のテーマが見つかっていくと信じてやればいいのかなと思っています。

Q、(瀬戸さんへの質問)クラスで心理的安全性が担保されるような雰囲気が実際に醸成されるのは、どのようなプロセスがありましたか?

A、(田口先生)教員がまずチャレンジして、失敗するというのを繰り返してきました。生徒も巻き込まれて、一緒にチャレンジするという雰囲気ができてきたと思います。

A、(瀬戸さん)1年生の時に、生徒同士がお互いを知るための時間があり、それがあったから、協働が起こりやすいのかなと思います。

Q、(協力した生徒のEさんへの質問)プロジェクトに協力した生徒さんの視点からお話が聞きたいです。

A、(Eさん)私は最初はユニバーサルデザインのプロジェクトを考えていましたが、停滞している時がありました。その時に、女の子のトイレのボックスを作ってもらえないかなと誘ってもらって、そこから一緒にやっています。自分にとって、女の子のトイレプロジェクトは最初はすごいなとしか思っていなかったけど、実際やってみると、すごく難しいし、分からないことがいっぱいありました。たくさんの人や、初めましての人と一緒にやるので、色んな考え方を学べて、体験ができて、楽しいなと思っています。

Q、(田口先生への質問)二人のコラボレーションについては、どのように見られていましか?

A、(瀬戸さん)最初の女の子のトイレのボックスは、段ボールだけで、どうしようかと話をしていました。そこを、さまざまな工夫をして、見た目や使いやすさを考えて、改善して行っていました。その中で、議論しながら、それぞれのこだわりを持って、話をしていました。二人でバトルしていましたね。笑 衛生面など、必ず押さえないといけない部分は、大人からも話をしました。

Q、(田口先生への質問)小中高一貫のカリキュラムは必要だと思いますか?

A、(田口先生)成長段階があると思うので、できる範囲の中で、プロジェクトを回していく経験をして、学びを深めて行って、それがどこかで役に立つという感覚でいいのではないかと考えています。

参加者の感想

  • ワクワクする実践とその背景がギュッと詰め込まれていて、質疑応答でも「そこ聞きたい!」というところを引き出してくださっていて、とても充実した時間でした。
  • 非常に良い会でした。生徒の研究例がもう一つほど見てみたい気持ちもあります。
  • 高校生の発表と先生の目線の発表は、教育関係者にとって面白い視点でした。
  • 「デザインは好きだけど得意ではない」という発言からそれぞれの技能の分析してチームを組むのも面白いなと感じました。
  • 「まずは一回転せよ!」明日早速テーマで悩んでいる生徒の背中をドーンと押してきます。心理的安全性を確保したうえで協働ベースでの取り組みを促していたのもとても納得で、すぐには難しくとも頭の片隅に置いておきたいと思いました。

まとめ

勉強会では、上記のような発表とディスカッションの時間がありました。

「まずは一回転してみよう」「心理的安全性を大切にしよう。そのために、まず大人が挑戦と失敗を繰り返して、成長していこう」「生徒と一緒に挑戦しよう」「自分と違う人とのコラボレーションを大切にしよう」

このようなメッセージをお二人から受け取りました。安田中学高等学校の皆さん、大変貴重なお話をありがとうございました。

勉強会vol.2 ゲスト、参加者の皆さんと集合写真

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