急な階段をのぼると出現する、ミカタカフェ2階の元居住スペース。
眺めも風通しもよい、14畳分のスペースがあります。
このスペースに新たな生命を吹き込み、
「勉強したくなっちゃうスペース」にしよう。
誰かに任せるんじゃなく、自分たちのアイデアで。
できる限り、自分たちの手で。
そんな話が持ち上がったのはちょうど1年前。
黙々と勉強したい学生が集う学習スペース、様々な人が集い楽しむコミュニティスペース。
この2種類のスペースを両立させるには、ミカタカフェの1階は少し手狭でした。
今回リノベーションプロジェクトに協力して頂いたのは、早稲田大学・建築学科の古谷・藤井研究室の皆さん。
200名を超えるメンバーが在籍し、そこに暮らす人々を「幸せにできる建築」とは何かを追求されている研究室です。
古谷誠章研究室
そんな早稲田大学の皆さんと一緒にアイデアを出し合い作業を進めたのは、
学習スペースの主役、広島県立大崎海星高校に通う高校生7人。
ミカタカフェ×早稲田大学×大崎海星高校。
3者協働による、セルフリノベーションプロジェクトが始まりました。
「勉強したくなっちゃうって、どういうこと?」
経験はあるけど、全員が異なる答えを持っている問いに向き合い、対話する時間が続きました。
全3回の協議を重ね、決まったコンセプトは『なつかし、あたらし勉強空間』。
古民家らしいどこか落ち着く雰囲気を残しつつ、
勉強のモチベーションも上がるような新しさも感じる空間を考えます。
3月に1度、7月にももう1度、日程を分けて現地での話し合いを実施しました。
3月時点では中学生だった大崎海星高校生の1年生が、大学生・大学院生と堂々と意見を交わしている光景を見るのは、少し不思議な感覚でした。
古谷先生もご多忙の中、何度も大崎上島へ足を運んでくださいました。
大人が介在しない、高校生と大学生のみでの協議も実施。
実はこの時間、今回のリノベーションプロジェクトを実施する一番の目的でした。
大学生不在の島・大崎上島で、中高生が大学生と出会う機会はほとんどありません。
正解のない課題に対して、「自分はこう思う」とはっきり伝え、
その意見に対してはっきりとフィードバックを頂ける機会はなおさら稀有です。
写真の彼は、高校3年生。受験を控えています。
「素直に面白そうだと思った。自分で作った場所で、受験勉強を頑張りたい。大学生・大学院生がパワフルに活動する姿を見て、自分も早く大学生になりたいと思うようになりました。」
このプロジェクトに参加した理由と、大学生と一緒に活動した感想をそんなふうに話していました。
「どうしたい?」「どう思う?」「なんでそう思ったの?」
こんな迫力でそう問われると、大人でもたじろいでしまいます。
自分の考えを少しずつ表現できるようになった子も、
最後まで伝えることができなかった子も、
「どっちでもいい」と考えることをやめてしまった子も、
いつかこの時間・この機会を思い出してほしいなと思います。
掃除と協議を少しずつ少しずつ進め、7月下旬に本格的な施工に入りました。
畳を剥がし、床板を貼るための下地材、通称根太(ねだ)を張るところからスタートです。
床が微妙に傾いていたり、左右の辺の長さが少しだけ違っていたり、
計算をし直しながら作業を進める工程に苦労していました。
無事、床を貼り終えると、
次はこの空間のシンボルでもある”畳の小上がり”の製作に移ります。
多様な勉強スタイルを確保するため、
より楽な姿勢で長時間の勉強を続けるため、
畳を再利用して、小上がりをつくろうというアイデアに辿り着いたのでした。
木材は全て、近くのホームセンターで購入したものです。
別々に作った部品が組み合わさりながら、少しずつ小上がりの全体像が見えてきます。
ちょっと休憩。裏庭でスイカ割り。
この頃には、だいぶ高校生と大学生も仲良しになっていました。
次に取り掛かったのは、窓際の細い通路?です。
このスペース幅をどう利用するか、現地での協議も白熱しました。
最終的に落ち着いたのは、
カウンターテーブルを置くアイデアでした。
結局は椅子と机で勉強するスタイルが一番慣れているし、やりやすい。
天板を前に少し張り出させる事で、通路の狭さは問題ではなくなりました。
眺めも良く、下校中の小学生や高校生の姿も見ることができます。
「ちょっと勉強していかない?」
二階からそんなお誘いが降ってくる通学路になるかもしれません。
(通りがかりのサッカー部も、お手伝い。)
最後に取り掛かったのは、押し入れスペース。
ここは高校生たちのアイデアがふんだんに採用されています。
一人でこもって勉強する”超集中スペース”を作りたい。
ずっと座っていると疲れるから、立って勉強できるスタンディングスペースがほしい。
ドラえもんみたいに仮眠スペースがあってもいいかも?
友達と教え合いながら勉強したい時もあるよね。
最終的に、押し入れがこんなに素敵な勉強空間へと変身。
机の上のブロック型の棚も、自分たちでDIYしています。
色々な使い方、それぞれの学び方がこのスペースに凝縮されています。
施工完了後の全体写真。まさに「なつかし、あたらし勉強空間。」
もうひとつだけ嬉しかったエピソードをご紹介。
この夏、たくさんの大崎海星高校の卒業生がミカタカフェに立ち寄ってくれました。
高校卒業後は多くの場合、進学や就職のために島外へ出るので、少しずつ関係は疎遠になります。
「なんか手伝うことありますか?」
リノベーションプロジェクトをどこかで聞きつけ、ペンキ塗りを手伝いに来てくれる卒業生がいる。
「なんで大崎海星高校に来たの?」
会ったこともない卒業生と在校生が、会話できる機会がある。
ミカタカフェができて、再会も、新しい出会いも少しずつ積み重なっている。
まさに、みたかった光景でした。
『誰もが誰かのミカタになれる場所』
ミカタカフェの中に、またひとつ新しい空間が誕生しました。
カフェの営業時間中は、学生に限らずどなたでも無料で2階スペースをご利用頂けます。
勉強でも、仕事でも、考え事でも。
「勉強したくなっちゃうスペース」、ぜひ一度体感してみませんか?
■営業時間
木・金曜日 13:00〜20:00 / 土日祝日 10:00〜17:00
コンセント・Wifiのご利用も可能です。
早稲田大学の皆さん。
素敵な時間、素敵な空間をありがとうございました。
またいつか。大崎上島で。
(ミカタカフェ代表・勝瀬)