まなびのみなとのメンバーになり2年が経つ。事業の担当しているメンバーがどんな想いをもっているのかインタビューし、記事にしていくまなびのみなと事業紹介。今回は、2021年秋にオープンした『ミカタカフェ』の紹介をする。
〜「誰もが誰かのミカタになれる」ような子どもたちを中心とした居場所づくりを〜
2021年9月12日、大崎上島に「ミカタカフェ」がオープン。島の高校生を中心とした、子どもたちの学校・家庭に次ぐ「第三の居場所づくり」を担いたいという想いでスタートを迎えたこの場所は、地域交流を生み出すことを目的としたコミュニティスペースと、併設のカフェスペースで構成される。
いつもと少し違う環境を変えて勉強したいとき。なかなかやる気が起きなくてちょっとで良いから誰かに背中を押してほしいとき。都会の生活だったら、学校帰りにカフェに寄って勉強してから帰る、なんて選択肢もあるかもしれない。過疎化と高齢化の進む離島では無い光景。
いま、ミカタカフェとなっているのは、約30年前まで町のパン屋さん「タカキベーカリー アリス」として営業されていた古民家で、改修等に必要な費用は「子ども第三の居場所事業」を展開する日本財団様より助成をいただいた。
子どもの居場所をつくろう、と思い立ったのが2021年1月。少しづつ準備を始めたのが同年4月。高校生や地域の方々にお手伝いをいただきながら約半年間に及ぶ大掃除が始まった。同時に、高校生の学習スペースの開放も開始。
「目的があってもなくても、いつでもふらっと立ち寄れる場所をつくろう」というのが、ミカタカフェの出発点。ミカタカフェの発起人、まなびのみなとメンバーの勝瀬祐介さん、神田瞳さんの2人は新型コロナウイルスの流行がはじまった2020年に大崎上島に移住し、地域おこし協力隊として大崎海星高校の公営塾で働いている。きっかけは、ある高校生の思い描いていた学校生活に対しての「こんなはずじゃなかった」という一言だった。コロナ禍で活動が制限される中で、思うように地域とのつながりが作れなかった高校生たちの声を耳にすることが増えた。そんな背景の下、地域の方々の交流拠点となれる”コミュニティスペース”を立ち上げたいと思った。またこのカフェ拠点を誰もが利用しやすくなるための入口として、”カフェ”機能を持たせようという話があとから加わり、これがミカタカフェの立ち上げとなった。
2021年春、カフェの立ち上げをスタートし、夏にミカタカフェの常駐スタッフとして関東から大崎上島に移住した永峰苑佳さん、秋に高校生スタッフ3人が加わった。
オープンに向けて、看板メニューとなるオリジナルコーヒーの開発を大崎海星高校の生徒と始めた。形のないものを形にしていくことは難しいがとてもワクワクした。大崎上島らしさを探して、みんなで大崎上島を一周した夏の暑い日もあった。オリジナルコーヒーの開発は、大崎上島からフェリーで30分渡った先にある安芸津歳實コーヒー( https://www.toshizanecafe.com/roaster.html )にご協力いただき作った。オリジナルドリップ珈琲は2種類。温暖な気候から柑橘栽培が盛んな大崎上島の柑橘の爽やかさと、日の出とともに作業を始める柑橘農家の方々の元気ハツラツさをイメージした『はれやかコーヒー』。大崎上島の人々のホッとするあたたかいやさしさをイメージした『ほんわかブレンド』。コーヒー開発に必要となる費用はクラウドファンディングで127名に支援していただいた。
コミュニティスペースの活用の仕方は、仕事をして時間を過ごす。放課後の学生たちの勉強場所、大人たちの打ち合わせスペース、お散歩中のちょっとした休憩場所、小さな子どもたちの遊び場など、その時々の利用者によって使われ方も様々。利用者は基本的に好きな用途でスペースを使うことができる。また、イベントを通していろんな方と繋がったり、あるいは、”こんなことやってみたい”に対して一歩踏み出す機会としてのイベント企画・開催もできる。
カフェスペースでは、高校生たちが開発したお菓子が店頭に並ぶ。1つ1つのメニューのコンセプト考案からレシピの作成、さらに、実際のお菓子の製造から、販売の接客まで高校生が行う。
メニューは、オリジナルコーヒーだけでは無く、子どもも楽しめるレモンスカッシュや高校生が考案した焼き菓子など様々。
カフェを利用したい人、コミュニティスペースを活用したい利用者、イベントを通じて関わってくれる人。いろんな層の人が入り混じり、学校や家庭では出会えなかったような、人のつながりが生まれることを目指しているミカタカフェ。
これからまた色々な方々が関わり移り変わるメニューを見ることが楽しみだ。
ミカタカフェでは、隔週でイベントが行われており、季節ごとにもイベントを開いている。
例えば、昨年のクリスマスの時期には「クリスマスマーケット」を開いた。当日は中学生の手作りクッキーの店、絵本が好きな高校生による移動絵本館、キャンドルワークショップ、ブレンドハーブティーなど4店の出店があった。子どもから大人までが「ちょっとやってみたいことを試しにやってみる」という、最初の一歩をみんなで踏み出す機会となった。
3月には高校生カメラマンによる写真展を3日間開催。開催の2ヶ月前に自作の企画書を手に準備を進め、「大崎上島の一日」「日本写真旅行」「交通」の3テーマで展示。高校生カメラマンの写真講座とトークイベントも行い、学生から子どもまで多くの人がコミュニティスペースとカフェスペースに足を運んだ。
また子どもも大人も関係なく、フラットな「人と人が繋がる機会」をつくっていこうという背景のもとスタートした「島人休憩時間」は、月に1度、島で活動する島人さんをお招きしてゆるく楽しくおしゃべりをする企画。仕事を通して出会う、学校の授業で出会うのとはまた違ったフラットなゆるい繋がりを地域の中で築くことができればいいなという想いで開き、大崎上島にいる人が繋がる機会を作る。
大崎上島の”高校生を中心とした居場所づくり”としてスタートしたミカタカフェだが、今後の展開について、「様々なイベントを通して、世代を超えた人の繋がりを作ることで、高校生だけでなく、誰もが誰かのミカタになる。この場所でいろんな方の居場所を作れたらいい」と言う。
それは、ミカタカフェに通って下さる大人のお客様からの「若い人たちとお話ができて楽しかったわ」「やっぱり元気がもらえるね」といった声を耳にする機会が増えたことが大きいそうだ。”地域の大人と繋がる”ということ、それは子どもたちにとってのメリットだけではないのかもしれない。
〜終わりに〜
大崎海星高校に通っていたころ、学校や塾以外に過ごせる場所があればいいなとよく思った。大学に進学してからは自分で好きな場所を見つけてそこに行って過ごすが、帰省した時のミカタカフェに行ってオンライン授業を受けたり、作業をする。島の中心にミカタカフェのような空間があるといいなと思う。
【ライター紹介】
梶村莉子。広島県大崎上島出身。地元、大崎海星高校に進学し全ての地域活動に参加。みりょくゆうびん局立ち上げメンバー。2019年3月卒業。東北芸術工科大学デザイン工学部コミュニティデザイン学科在学中。