まなびのみなとのメンバーになり2年が経つ大学生ライターが事業を担当しているメンバーがどんな想いをもっているのかインタビューし、記事にしていくまなびのみなと事業紹介。第1回は1月に開催した全国高校生マイプロジェクトアワードを担当した勝瀬祐介さんの想いを取り上げる。
ーはじめにー
『マイプロジェクト』(通称:マイプロ)とは、その人自身の課題感から自発的に起こされる行動で、誰かにやらされるのではなく、興味や課題感から起こされるアクションと、そのアクションが他者や社会を巻き込みプロジェクトとなっていく学びのプロセスそのものを指します。
2020年4月に大崎上島に移住した勝瀬さんは、それまで東京で教育系の企業で働いて暮らしていたが、マイプロジェクトアワードの全国大会で見た高校生の姿に衝撃を受けた。
マイプロジェクトを通して、自発的に高校生が好きなことややりたいことに取り組むことで学校の外に出ることが増え、自然と学校や家以外での地域の人との関わりができ、それが高校生にとって学びになる。そんな、高校生が学校の外で熱中して学ぶマイプロジェクトが面白そうだなと思った。マイプロジェクトアワードを主催しているNPOカタリバの事務所に足を運び、地域で教育活動を行っている教育者の方々が登壇するイベントにも参加した。その時に大崎海星高校の話を聞いて、これがやりたいことだなと思った。
『今の仕事を辞めて大崎上島に移住しよう』
勝瀬さんは、大崎上島町の地域おこし協力隊として、広島県立大崎海星高等学校にある公営塾「神峰学舎」で働いている。公営塾では教科指導だけでなくICTを使った学習や一人ひとりのやりたいことを見つけるためのサポートをしている。休日も高校生の地域活動を伴走したり、一緒にイベントを行うなどしている。
移住して地域おこし協力隊1年目の時、コロナが流行し始め、学校の外で高校生が好きなことややりたいことに取り組む機会が減ってしまっていた。マイプロジェクトアワード中四国summitの運営にも関わった。
「マイプロジェクトアワード中四国summitでは、参加者が多いと大会の場で発表できる生徒がどうしても限られてしまう。マイプロジェクトアワード広島summitを開催することで、大崎海星高校の生徒が自分のプロジェクトを外に発信したり、同じことをやっている同世代と出会った方がいい。そして、それは広島県内の他の高校生も同じだろう」
2021年春、移住のきっかけをくれたマイプロジェクトを広島で開催する動きが始まった。
広島県内の高校の先生やNPOカタリバの方、まなびのみなとのメンバー、大学生らとオンラインでマイプロジェクトとはどんな取り組みなのかを県内の高校の先生に説明するキックオフ会を行った。高校時代にマイプロジェクトアワード2016に出場し文部科学大臣賞を受賞した岡田紗季さんにマイプロジェクトの発表を聞いた。
また、大崎海星高校の中でもまずは1年間、プロジェクトが自然に生まれる文化を作りたくて、「大きくても小さくてもいいからやってみよう」「自分で見つけて考えてやってみてアクションしてみよう」と公営塾でマイプロジェクトの実施を生徒に提案し、伴走を始めた。
広島市内の高校や尾道市の高校には直接行ってマイプロジェクトや広島summitの説明をし、広島県内の大学などにも広報に行った。しかし、このような広報をしたにも関わらず、11月に開催した中間発表会では、高校生の申し込みが3名だった。なぜこんなに参加者が集まらないのか。締め切り2週間前になっても申し込みはそれほど変わらず、いよいよ焦って、親交がない先生にも約50人にまなびのみなとメンバーと分担して電話した。電話をして初めて、マイプロジェクトの存在を知られてないことが分かり、衝撃を受けた。それまで高校の先生はマイプロジェクトとは何かをなんとなく知ってはいるが、学校内の発表やタイミングではないから生徒を参加させられないのかと思っていた。
『そうじゃなかった』
マイプロジェクトは自分が思っているよりも認知されていない。マイプロジェクトについて一から電話で説明していった。そして、マイプロジェクトに興味を持っていただいた先生の協力もあって、電話で広報をした後に計25プロジェクトが参加することとなった。
当日の高校生にアドバイスをしていただくサポーターと高校生の力を引き出せるようファシリ、サブファシリも決めなければならない。サポーターは元々つながりがあった方やNPO法人を運営されている方、起業家の方などバランスよく高校生との対話を楽しんでしていただける方に依頼した。ファシリは、まなびのみなとのメンバーにし、サブファシリは、広島に関わりのある大学生にお願いをした。
マイプロジェクトアワード広島summitの当日の率直な感想は、めちゃくちゃ良かった。
13校25プロジェクトの高校生が参加予定だった。始まる前はとても不安だった。しかし、開会式が始まる10時00分より10分前に全プロジェクトの高校生が集まっていて、まずそれに感動した。
第1回だから出場する高校生もすごい意欲的に活動したプロジェクトが多く、オンラインなのに、前のめりに出場しているのも伝わってきた。高校生が好きなことややりたいことに一直線に活動に取り組んで、熱く発表し語っていた。
私もシステムホストとして運営をし、広島summitを見ていたが、コロナ禍にもかかわらず、高校生が好きなことややりたいことに一直線に活動に取り組んで、熱く発表し語っている姿が印象的だった。
マイプロジェクトアワード広島summitは初開催となったが、来年度に向け2つに力を入れていきたい。
まず1つ目は、高校生が集まって生徒同士が交流できる機会をつくりたい。広島県には国公立、私立、分校合わせて136校あるが、第1回の参加校は13校だった。もっとたくさんの高校から生徒が参加して交流できる姿が見たい。
2つ目は、学校数もプロジェクト数ももっと増えるように広報や告知をしていきたい。生徒に”行ってこい”と背中を押すことや”出場して次どうする”などと問いかけるのは学校の先生になる。なので、学校の先生同士のコミュニティや学校の先生と地域のコミュニティを作っていけるようにすることと、頑張る先生が地域や学校で孤立しないように意見交換とかアドバイスをし合える会を定期的に開催していきたい。
そして、マイプロジェクトアワード広島summitのサブファシリを担当した大学生から “ 刺激を受けた ” “ 高校の頃の私を思い出した ” という感想があった。高校生のサポートをする大学生の仲間を増やしたい。高校生の身近な感じで相談を受けてくれる大学生が活動やプロジェクトに伴走しやすい環境を作りたい。
それに大崎海星高校の公営塾で関わっている生徒たちは大学生との交流が少ないからロールモデルがいたらいいなと思っている。
もしいつか、コロナが開けてリアルでマイプロジェクトアワード広島summitを開催できた時、高校生同士が友達になったり、同じようなプロジェクトがあれば、” 一緒にやろう “とか ” 経過を比較しましょう ” などのつながりもできれば嬉しい。2年後、3年後は大崎上島で開催できたら、大崎海星高校の高校生がおもてなしできる場になると面白いなと思う。
ー終わりにー
まだオンラインという言葉が浸透してなかった2017年の冬にマイプロジェクトアワード地域summitのオンライン大会に出場した。結果は残念だったが、あの時にオンラインの発表の経験ができてよかったなと思う。
そしていつか、広島で開催するときは携われたらなと思った。
当時高校2年生だった私は、現在大学生で運営に携わり、高校生の熱量に圧倒された。
勝瀬さんのインタビューは、これから「マイプロジェクト」や高校生のプロジェクトがたくさんの人に知られる広島になっていくと感じる時間だった。
【ライター紹介】
梶村莉子。広島県大崎上島出身。地元、大崎海星高校に進学し全ての地域活動に参加。みりょくゆうびん局立ち上げメンバー。2019年3月卒業。東北芸術工科大学デザイン工学部コミュニティデザイン学科在学中。