・・・
広島県の離島 大崎上島を拠点として活動する「ミカタカフェ」。約1年間、コミュニティマネージャーとして、一緒に地域の子ども・大人、そしてミカタカフェの挑戦を応援してくれたスタッフ・永峰さん。この度、ミカタカフェそして大崎上島を離れ、新天地で新しい挑戦をされることになりました。
お仕事紹介をまじえながら、永峰さんがこの1年間見てきた景色を綴って頂きました。
*ミカタカフェでは、新しく一緒に活動してくれる仲間を募集しています。

「教育の島」と呼ばれる大崎上島
ミカタカフェの永峰と申します。
このコミュニティカフェで働くために、2021年の夏に関東から大崎上島に移住してきました。
私がはじめてこの島を訪れたのは、2020年1月のお正月が明けてすぐの頃。きっかけは大学時代にお世話になっていた方からの、「面白い島があるから行っておいで」の一言から。
ものの数時間で沢山の方とお話をして、みるみる人の繋がりが出来ていって、とても濃密な時間を過ごしました。気が付いたら、その日知り合ったばかりの、年代もひと回り以上異なる方々と4人でこたつを囲って鍋パーティをしていた程です。


この島で出会った人たちには、心理的な意味での「壁」をあまり感じません。
年代・立場・性別等の側面ではなく、等身大の自分を見てもらえているような、社会に出て着込んでしまった鎧を剥がされていくような、そんな感覚があります。それは彼らが、”自分の人生を自分の意思で選択して歩んでいる人たち” だからではないかと思っています。
そんな人たちに囲まれた暮らしは、ふつふつと「自分もそう在りたい」という気持ちが湧いてきて、でも形だけでは見透かされてしまうような気もして、どこか自分の背筋もぴんと伸びるような、そんな暮らしです。
この島のことを「教育の島」と呼ぶことがあります。
でもそれはきっと、素晴らしい教育機関が島内にあるということだけに留まりません。もっと広い概念で、人生における「学び」がある島だと私は捉えています。それは教育関係者だけが作り出しているものではなく、地域住民1人ひとりが生み出しているものだと思います。
ミカタカフェで「地域の子どもたちを応援する文化」を
そんな大崎上島を拠点に立ち上がったコミュニティカフェ「ミカタカフェ」。
子どもの「味方」であり、色んな物事の「見方」を教えてくれる場所でもある。そんな2つの意味が込められています。

立ち上げを行ったのは、島の地域おこし協力隊の2人。
島の高校の中にある公営塾のスタッフをしていた2人は、学生たち1人ひとりの声をひろっていく中で、「学校の外で地域の人達と ”自然と” 出会える場所があったらいい」と考えるようになりました。その中で地域に開けたコミュニティスペースを作ろうという動きが始まり、
途中からここに「 ”学校終わりにちょっとカフェに寄って勉強していこう” というこれまでの島の生活には無かった文化を作れたら良いんじゃないだろうか」という考えが加わり、
こうして、カフェ機能を備えたコミュニティスペースが2021年9月からスタートしました。

ミカタカフェは、30年ほど前までタカキベーカリーアリスという、
地域でとても愛されたパン屋さんの跡を改装して使わせていただいています。
カフェ側の入口とコミュニティスペース側のそれぞれの入口があり、2つのスペースは1つのガラス戸で仕切られていて、どちら側からでも双方の様子を覗き見ることが出来ます。

ここを利用してくださる方々の用途は様々です。
カフェを利用しに来てくださるお客さん
喧騒を離れ集中部屋に籠って勉強をしに来る学生
ちょっと学校や友達には言いづらい悩みを打ち明けに来てくれる子どもたち
ここでたまたま出会った人とのお話を楽しみに利用される方
「子どもたちが喜ぶと思って、」と本やお菓子を持ってきてくださる地域の皆さん
「この場所を使ってイベントをしてみたい」と相談しに来てくれる親御さんや学生たち
様々な方が混じり合って、ごちゃまぜ空間が生まれます。
また、それぞれの居場所としての機能だけではなく、子ども達が何かに挑戦してみたいと思った時には「応援してくれる大人と出会える場所」でもありたいと思っています。
高校生と一緒にカフェの看板メニューであるオリジナルドリップ珈琲の開発をしたり、パティシエを目指す島の高校生たちがカフェのメニュー開発・製作を行ったり、子どもが主催のイベントをここで実施してみたり。まだまだちょっとずつですが、子ども達の学校を飛び出した背伸びの機会を応援していく機会も作ってゆけたらと思います。
そのために、私達スタッフが子ども達の活動の伴走をすることもありますが、
もっと言えば、地域の中で「地域の子ども達を応援する文化」を作っていきたいということを考えています。
例えば、最初はただカフェとして飲食を楽しむ為だけに利用してくださった方が、
次第に子ども達に混じってお話しに来てくださるようになり、
気が付いたら目の前にいる子ども達の為に何か協力してあげたいと思う人たちが出てくる。
ミカタカフェでは、そんな無意識の中での子どもとの繋がりや、
教育の機会をつくっていける場所なのではないかと思います。
学校で出会うのとはまた違った偶発的な出会いを作り出せる場所として、
あえて余白を持たせた出会いを、ここで。



コミュニティマネージャーという仕事
ここで私はコミュニティマネージャーという肩書で活動をしていました。
この仕事はミカタカフェのコミュニティスペースを管理するということに加え、人と人が繋がってコミュニティを形成していく為の仕掛け人になったり、時には相談役や人への繋げ役にもなったりもします。
ー利用者の対応
日常的なコミュニティスペースの利用用途は、平日は比較的勉強しに来る学生たちが多く、休日には小さな子どもたちが遊びに来ることがあります。時には利用スペースを分けてあげたり、賑やかに遊ぶ子ども達に危険がないかを見守ります。もちろん子ども達と一緒に遊ぶこともあります。
また、中にはお話をするために来てくれる子ども達や、地域の方々もいらっしゃいます。
初めはただ勉強スペースとして利用していた学生たちが、次第に その日あった嬉しかったことや頑張ったこと、モヤモヤしたこと、悲しかったことなどを話しにこの場所に来てくれるようになったり、大事な相談をしに来てくれるようになった時には、とてもこの仕事のやりがいを感じます。
そんな場を作っていく為には、彼らにとっての安心安全の場で在れるような関わり方が必須となります。コミュニティマネージャーは、相談事をなんでも解決できるスーパーマン的な立ち回り方は特に求められていません。
解決をしなくても、人に話すという行為ですっきりしたり、人に自分の気持ちを説明するという過程で自分自身を客観的に捉えられる機会になれば、それで十分だと思っています。
むしろ、ここで子どもを抱え込みすぎずに、地域に出していくことも大事です。
そうなった時には繋げ役になることも必要になってきます。
繋げ方は様々ですが、例えば「地域のあの人に相談してみたらどうだろう?」「今後ここのイベントにゲストとして来てもらえるように声をかけてみない?」「今度こんなイベントをやるらしいけど行ってみたらどうかな」等といったような、次に繋がるパスを渡してみる。
時には、私の地元・茨城で活動している方々と、島の学生をオンラインで繋いだりもしました。
島で生活をしていることに変わりはないのに、沢山の人との繋がりを作ることで、一気に見える世界が広がることがあります。そんな化学変化を起こすきっかけの1つをつくれたらと思います。
ー定期的なイベントの実施
しかし、前述したような利用者との関わりは、コミュニティスペースの利用者がいて初めて成立することです。場だけ開いていても、初めての場所に踏み込むという行為は勇気がいることだと思います。コミュニティスペースに足を踏み入れる最初のきっかけを作っていくためにも、(ゆくゆくは「無目的」にこの場所を訪れる人が増えたらいいのはもちろんなのですが、)始めのここに来る「目的」を作ってあげるためにも、定期的なイベント実施を心がけています。
毎週のように様々なイベントを企画実施していますが、ここではその中でも
私にとって思い入れの深いイベント、「島人休憩時間」をご紹介したいと思います。
2月に1回程度の頻度で実施しているこの定期イベントは、島で様々な事業を営まれる大人の方々招いて、その人の人生史やお仕事のこと、その人が持ってる哲学、好きなこと、子どものころの思い出、などなど…。飲み物やお菓子を置いたテーブルを囲みながら、ゆるっとした雑談を楽しむためのイベントです。今まで農家さんや神主さん、WEBデザイナーさん等、様々なゲストをお呼びさせていただきました。
「休憩時間」という名前に込めた想いは、ゆるっとお話しながら繋がっていける、そんな機会と場にしたかったからです。この場では、大人も子どもも肩書きも関係なくフラットにお話を楽しむことがルールです。島には色んな人生を歩んでいる人がいて、私はそんな人達と触れ合う時間が楽しくて、1つの生きる楽しみにすらなっています。「同じ島で生活する者同士、そんな人達の存在を知らずに生きていくのはもったいない!」そんな想いで、自分自身もまたこの場を楽しみながら、毎週のイベントを企画運営しています。



ーイベント実施者との調整や伴走役
イベントを毎週のように実施しつづけて、半年ぐらいの月日が経った頃、面白い現象が起こり始めました。少しずつ、島の学生たちや地域のお母さん方からの、持ち込みのイベント企画の相談が入ってくるようになったのです。こうして、少しずつ ”場を一緒に作ってくれる人たち” が現れ始めました。
①子ども達の持ち込み企画
子ども達からの持ち込み企画は、まずは大人の壁打ち役・伴走役が必要になることが多いです。そもそものイベント企画の仕方・集客の方法・スペース利用の相談・前後の振り返りの面談を行ったりもします。こうして学校外での、子ども達のストレッチゾーンを作るお手伝いをします。
②地域の大人の方々からの持ち込み企画
地域の大人の方々からの持ち込み企画のお話も、次第にいただけるようになりました。ご相談を頂いた際には、ミカタカフェで目指している世界観との齟齬が無いか・ここで実施するのが双方にとってベストかどうかなど、お互いの期待値を調整しながら一緒に場をつくっていきます。
この島でこの仕事をしていると、ふとした日常での人の繋がりがそのままお仕事に繋がったり、逆にお仕事で出来た繋がりが日常の人付き合いにも繋がったり、仕事と生活の境界線がぼやけてきます。この場があることで自分の目の前の人の、悩みや挑戦に協力出来ることも、時には出来ないこともあるけれど、出来ない時は島の人や自分の身の回りに相談して繋げることで、またそれが新しい人の繋がりを作っていくことが出来る。コミュニティマネージャーとは、人と人の繋がりをデザインする仕事なのだと思います。
ミカタカフェのコミュニティマネージャーの仕事をしていて、教育に携わっているという感覚はあまりありませんが、巡り巡ってそこにも繋がっている仕事だとも思います。教育として意識はしていないけれど、無意識下で子どもと向き合う時間が沢山あります。むしろ「子ども」というより、「1人ひとりの人間として向き合っている」という感覚の方が近いかもしれません。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ミカタカフェでは、
永峰さんの卒業後、11月よりコミュニティマネージャーとして一緒に活動いただける方を探しています。
人と関わることが好きで、
誰かの日常をつくることが好きで、
”コミュニティ”、そして”居場所”というふわふわしたものの正体を、手探りで一緒に探し求めてくれる方を探しています。
興味のある方はぜひ下記フォームよりお問合せください。
https://forms.gle/3C43UaX1c3TuMt8X6
*募集職種
ミカタカフェ・コミュニティマネージャー
*給与
時給1,000円
*勤務時間
毎週木・金曜日12:30〜20:30
(土日祝日の勤務も希望される場合、面接時にご相談ください)
*仕事内容
・コミュニティスペースにおけるイベント企画・運営
・広報記事作成や簡単な経理などの事務作業
・カフェスペースの運営・応対
*募集予定期間
10/2〜10/31